図柄表：マルクス・アントニウス図柄裏：ピタタス発行地：ローマ共和国アシア属州アントニウス軍駐屯基地発行年：前41年銘文表：ANT AVG IMP III V R P C銘文裏：PIETAS COS額　面：デナリウス材　質：銀直　径：20 mm重　量：3.7g分　類：Crawford 516/2; CRI 241; RSC 77; Sydenham 1174; BMCRR Gaul 70備　考：Rare R1 現存数200枚以下の稀少貨 軍用貨一昨年の10月に行われたRoma Numismatics Ltdオークションでは、VFコンディションのものが約253,000円で落札。現存枚数200枚以下と見積もられているR1指定の稀少貨である。マルクス・アントニウスの肖像と慈悲・敬虔の女神ピエタスを描いたデナリウス銀貨。アントニウスが駐留していたアシア属州の基地内で発行された軍用貨である。前42年にカッシウスとブルートゥスをマケドニアのフィリッピで撃破したアントニウスは、ローマでの権力を掌握した。だが、カッシウスとブルートゥスがいなくなったことで、協力関係にあったカエサルの姪の息子オクタウィアヌスと対立するようになる。この不和を解消するために、アントニウスはオクタウィアヌスの実姉オクタウィアと友好を目的とした政略婚を行う。だが、二人の不仲は治らず、最終的にはギリシアのアクティウム沖で争うことになる。カエサル亡き後のローマでは絶対的な支配者が不在となり、話し合いの結果、第二回三頭政治が行われることになった。アントニウス、オクタウィアヌス、レピドゥスの三名による三執政官制政治で、広大なローマ領域を三分割して統治することが決められた。アントニウスがエジプトやシリア、アシアを含む東方属州、オクタウィアヌスがヒスパニア及びガリア、ゲルマニアなどの西方属州、レピドゥスがエジプトを除く北アフリカ一帯のアフリカ属州を担当することになった。この三頭政治においてレピドゥスは飾りであり、実権はアントニウスとオクタウィアヌスにあった。それはレピドゥスに与えられた担当領域がアフリカ属州のみという不遇な扱いからも分かる。カエサルの後継の地位を狙って内戦が勃発する直前の緊迫感あるドラマティックな時代に発行された一枚。男たちの野望を具現化した熱きミリタリーコインである。